- しなやかに、まっすぐに。
竹の力で、
持続する社会を作る。 -
- I-OPENER’S STORY
- 田澤 恵津子
- エシカルバンブー株式会社
I-OPENER’S STORY #07
かつては日本の暮らしに欠かせない素材であった竹。生育が早く、手近にあって加工も容易だったことから、竹かごやお箸など、日用品の多くに使われてきました。しかし、いつしか大量生産のプラスチックなどに置き換わり、竹林に人の手が入らなくなった結果、放置竹林としてさまざまな問題が起きています。今回ご紹介するエシカルバンブー株式会社は、竹の可能性を再発見し、その企画力と確かな商品力で圧倒的な人気を集めるエシカル企業。2023年には環境省主催のグッドライフアワードにて環境大臣賞を受賞しました。代表取締役社長であり敏腕経営者でもある田澤さんに、事業にかける想いと、その知財戦略について聞きました。
- I-OPENで取り組んだこと
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模倣対策(模倣駆除よりも模倣させない仕組み作り)の支援や国産竹素材を訴求したブランディング支援
知財活用によるオープンクローズ戦略の立案支援
協賛企業をまとめるプラットフォームの構築、海外事業戦略、知財戦略の支援
- 知的財産活用
- ノウハウ保護すべきものと特許で保護すべきものの峻別はできた。ブランディングプロモーションに商標の有用性を理解した(商標登録は6件保有)。
貪欲に学び続けた20代
Q. 田澤さんは、ユニークな経歴をお持ちだと聞いています。まずは、現在に至るまでの歩みについて、聞かせてください。
田澤:もともと私は、30代で独立すると決めて、将来の計画を立てていました。というのも、身体の不自由な兄がいて、いつか私が面倒を見る時が来るので、そのために独立開業して準備しておこうと考えたんです。高卒でまず百貨店に勤めて、その後、総合商社に入りました。日本で一番大きい会社に入って、社会的な信用を得ようと思って。以後も、自分が独立するときに足りない要素を見越して、ソニーなどのメーカーや広告代理店など、さまざまな企業で働きました。プロモーションやマーケティング、マーチャンダイジングと、いまの事業は当時学んだあらゆることが生かされています。
例えばソニーにいた時代には、ブランディングという概念を学びました。ノベルティグッズひとつ作るにしても、ソニーはブランド管理がすごく厳しく、情報の扱い方に対しても敏感でした。小規模の事業者だと、なかなかリスクマネージメントまで考えが及ばないものですが、私は最初に大切なことを学ばせてもらいました。その意識が、今回のI-OPENプログラムへの参加にも繋がっていると思います。
過去に学び未来に生かす、竹の無限の可能性
Q. 竹という素材との出会いや、起業に至った背景を教えていただけますか。
田澤:2006年に独立して、中目黒でマーケティングやブランディンを行う会社を立ち上げました。そこで、電力会社の仕事を手伝ったことから、竹に出会います。放置された竹が電線に引っかかり停電の原因になるのを防ぎたいと、相談があったんです。竹の特徴を調べながら、いくつもの疑問が湧いてきました。竹は成長が早く、伐採しても追いつかなくて困っている。とはいえ、その場所に竹があるのは、昔誰かが植えたからに違いない。では、何のため? 昔は、人々が竹かごや炭、筍と、竹をさまざまに利用して暮らしていた。それがなくなり、人の手が入らなくなって、放置竹林の問題が起きている。昔は重宝されていたのに、いまは邪魔モノ扱い。でもこれは、竹の無限の可能性を示しているとも思ったのです。
田澤:竹には抗菌作用があり、消臭効果も期待できます。竹で作れるもので、かつ現代人の生活にとって欠かせないものは何だろう? そう考えて「バンブータオル」という商品を作ったところ、これが大ヒットしました。さらに、タオルのユーザーの方から「赤ちゃんがタオルを気に入って、いつも咥えているので、口に入れても問題ない洗剤でこのタオルを洗いたい」と問い合わせがあり、そのから着想を得て、竹の洗剤「バンブークリア」も商品化しました。山口県の防府に、竹の炭から抽出する成分で細々と洗剤を作っている方々がいて、最初はOEM生産をお願いしに行ったんですが、「私たちは高齢だし、もうこの事業は畳むよ」と言われてしまって。この貴重な技術を眠らせるわけにはいかないと思って、うちの会社で事業ごと買い取ることにしたんです。
こうして、タオルと洗剤を主軸に、サスティナブル素材である竹を扱う会社として、エシカルバンブーを設立しました。エシカルと社名をつけたのは、自分たちの決意表明であり、「エシカルなことしかやらない」と自分たちにプレッシャーをかけ続けるためでもあります。
自社の強みを見極めて、守る
Q. I-OPENプログラムに参加した動機や、プログラムで得たものについて教えてください。
田澤:これまでの経験から、リスクマネージメントについては慎重に考えていました。大手企業のビジネスの進め方を間近で見てきましたし、事業規模が小さいうちに対策しておかないと、後からでは取り返しがつかない事態を招くことも知っていました。実際に、私たちの商品がそっくり真似されたこともあったんです。だから、契約関係はしっかり整え、補助金などにも頼らず、すべて自分たちでリスクを取ってビジネスを進めてきました。
これからさらに前に進めていくためには、知財戦略をもっと詰めないといけない。でも私一人では考えられない。そんな状況下で、ちょうどテレビ取材などが重なり、知名度も上がってきた頃にI-OPENプログラムの話を聞き、メンタリングをしていただくことになりました。
参加してみると、驚きの連続でした。自分たちの強みはこれまで何度も分析し理解してきたつもりでしたが、明確に言語化いただいたことで、ふっと腑に落ちる瞬間がありました。オーガニックといっても数%は化学薬品が入っていたり、安全性が証明されていないケースも多い中で、うちは工場にもしっかり投資して、製造機器も自社で新しく開発したものです。安全性の証明にも、率先してお金をかけて試験しています。そういった、いわば裏側の苦労を、会社の強みと定義していただいて、これまでの努力が報われるような思いでした。
田澤:メンターの先生方が、私の頭の中を整理して、スラスラと方程式を書いてくれるような快感がありましたし、やるべきことが山積みの中で、優先順位を整えてくれたことも、とても助かりました。経営者って、ついつい一人で悩みを抱え込みがちですし、自分の立ち上げた事業だから思い入れが強く、客観的になれないところがあります。思考を整理するにも、個人的な感情が入ってきて、それを邪魔してしまう。そんなとき、メンターの方々が参謀役として入っていただけることが、精神的にも心強かったですね。
Q. I-OPENプログラムへの参加を検討している方に、メッセージをお願いします。
田澤:私はこの事業を通じて、国産の竹のブランド化を成し遂げたいと思っています。その時に、広げていくことと同時に守ることが大事で、そこに専門家の知見が必要になってきます。先日も、ある国の大使館を通じて外国の方が工場見学をしたいと依頼がありましたが、これ以降は見せてはいけないという一線を守るのに苦心しました。でもその積み重ねが、日本の技術や産業を守っていくことに繋がっていくと思います。
田澤:日本は、人の頭や手で生み出す技術は素晴らしいのに、それを自国で守る戦略は、ヨーロッパなど諸外国に比べてまだまだ甘い。現在の竹を取り巻く状況は、そのことを象徴している例のようにも感じます。かつては国内の至る所で有効活用されてきた竹が、安い輸入材に取って代わられ、自国の産業を守れなかったどころか、放置竹林として被害をもたらしているわけですから。こうならないためにも、I-OPENのようなプログラムを私たちがもっと活用し、事業者と特許庁とで、ともに展望を語っていけると良いと思っています。
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YELL FROM SUPPORTER
YELL FROM SUPPORTER
社会課題を解決するエシカルバンブーの取り組みは、人々の共感を得て、多方面から注目を集めています。I-OPENのメンタリングでは多くのステークホルダーが絡む複雑な状況を紐解き、価値ある知的財産を可視化しました。これを契機に知財を活かした経営を強化し、会社の魅力を更に高めて頂けるものと期待しています。
- アルヴァリンク弁理士法人代表/弁理士
- 森岡 智昭
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YELL FROM SUPPORTER
YELL FROM SUPPORTER
エシカルバンブーは、技術、製造プロセス、サステナビリティへの徹底した取り組みなど、他社が簡単には真似できないような非常にユニークな個性を持った先進的なスタートアップ企業です。I-Openのメンタリングを通じて言語化した同社の強みと企業哲学を発展させることで、今後の更なる成長を期待しております。
- tangerine/日本代表
- 和泉沢 剛
- 田澤 恵津子(たざわ・えつこ)
- エシカルバンブー株式会社
代表取締役社長 -
1973年、東京生まれ。高校卒業後は大手百貨店に勤務し、カナダ留学を経て総合商社に入社。その後はソニーや大手広告代理店などで活躍し、広告宣伝やマーケティングを担当。2006年、企業のマーケティングとコンサルティングを行う株式会社プランニング・オフィス・クルーを立ち上げて独立。2008年、竹素材の可能性を見出し、オリジナルタオルを企画・製品化。2016年、山口県防府市にエシカルバンブー株式会社を設立し、2020年には山口県宇部市に国内初の竹繊維専門の自社工場を開設。竹を主軸としたサスティナブルメーカーとして、国内外で注目されている。